ウェルニッケ失語症:理解できないという自覚がない
重度のウェルニッケ失語症では、言葉を理解できないという自覚がないことがあります。
健常な人なら、人に話しかけられて聞き取れなければ、聞き取れなかったと感じます。
しかし、重度のウェルニッケ失語症では、このようなことは起こりません。
自分の病気が理解できていない状態で、病態失認とも言われています。
周囲は自分の言ったことを理解していない、という認識はありますが、自分は理解できていると感じています。
周囲の理解と自分の理解に大きな開きが生じています。
患者には患者の理解の基準がありますが、その基準は健常者と比較して、ずっと曖昧なものになります。
ウェルニッケ失語症では、心の中で感じた音韻の塊が、塊のままに留まり、言葉としての個別の音へと分かれていきません。
そのため、聞いた言葉の正確な理解ができなくなります。
これにより、文字言語の理解障害も起こります。
文字は発声される言葉とは違い、初めから音節や単語ごとに形態が区切られ、個別の単位として学習されてきました。
音韻塊心像だけでは文字との対応はできません。
文字、特に仮名などの表音文字は正確な言語音心像と対応させられなければ、意味が喚起されません。
言語音心像群が構造を持たなくなれば、読みようがないからです。