ウェルニッケ失語症の理解:刺激と記憶が一致しない
ウェルニッケ失語症では、聞いたセンテンスまたは単語を自分の中にある音韻塊心像と対応させることはできますが、そこからさらに正確な言語音系列には分解できず、正確な理解をすることができません。
音韻塊イメージは非常に不安定なもののため、状況によって理解できたりできなかったりということが起きます。
会話理解とは、その人が持っている言語性記憶心像と、外部から入ってくる音声情報とを照合させることです。
この照合は、単語や音節の観点だけで行われるわけではありません。
センテンス全体から、単語や音節の聞き取りまで、あらゆる水準で行われています。
単語が正確に照合できなくても、単語を含むセンテンス全体は全体のまま聞き取られ、発話全体の聞き取りの記憶と照合されます。
言葉がほとんど理解できない重篤なケースでも、外国語で話しかけられれば、日本語ではないと感じられるのは、まず最初に話しかけられた音声の全体構造を持つ特徴が自分の持っているセンテンスの音声全体構造の記憶と照合し、聞きなれない言葉が聞きなれた言葉から区別されるためです。
そして、相手の発話の全体構造が、質問なのか命令なのかなど、大まかに区別していきます。
自分の持つセンテンスの聴覚性記憶と照合して、そのセンテンスの性質を区別しています。
重症なウェルニッケ失語症でも、この段階の記憶は問題ありません。