ウェルニッケ失語症と心像
ウェルニッケ失語症は、言語プロソディやセンテンスを作成する能力はありますが、必要な語彙をその場で作り出す能力が欠けている状態です。
つまり、実質的な意味を持った会話をすることができません。
しかし、その意味とは一体どのようなものでしょうか?
意味は単語などとして、声音として構音化されたり、文字として形態化されたりするので、いかにも安定しているように見えますが、それは外部的な形式にすぎません。
実際に会話する人の心の中で起こっている言語性経験は、必ずしも音声や文字のような明確な聴覚的または視覚的な形をしているわけではありません。
もっと曖昧なものです。
意味とは、心が作り出す心像です。
心像ははっきりと存在する実体的なものとは違い、非常に曖昧なものになります。
心像は、心理的経験によって生み出され、その場に応じて作り出されます。
人は通常、心像を整えられた形でしか気付くことができませんが、この心像を生み出す過程に障害が起きているのがウェルニッケ失語症です。
脳の損傷があると、心像の生産工程において不具合が生じます。
これに気付くのは家族や医師など、周囲の人間です。
本人は生産工程に不具合が起きていることに気付くことができません。