失語症と大脳
大脳は、外から見るとどの部分も大きな差はありません。
しかし、その働きは、体を動かす部分、匂いを感じる部分、言葉を操る部分、と場所によって多種多様です。
こうした区分は、生まれたときに既に厳密に決まっているものと、ゆるやかにしか決まってないものがあります。
特に言語の場合は、成長とともに少しずつ決まってくると考えられています。
そのため、同じ言語中枢といえど、その働きは若干の個人差があります。
生まれてから言葉を覚え始める3歳くらいまでの間に、失語症になった場合は、再び言葉を獲得することができるケースがほとんどです。
これは、生まれてすぐの時期には、ダメージを受けた言語中枢のかわりに、別の場所が言語中枢としての役割を果たすようになるからだと考えられています。
年齢と失語症の関係でいうと、成長とともに脳の働きは限定され、年齢が上がればあがるほど、失語症からも回復しにくくなります。
適切な言語訓練を受けても、だいたい3年ほどで回復はゆるかになります。
しかし、その後、テレビを見たり、本を読んだりして、言葉に多く触れた人では、そうでない人に比べ、長期にわたる言葉の回復が見られます。
大脳は神経細胞のかたまりで、一度ダメージを受けた神経細胞はよみがえらないといわれていますが、一方で、大脳には予備の部分がたくさんあり、一部分がダメージを受けても、他の場所がその働きを補う柔軟さも備えています。