ブローカ失語症:歌とプロソディ
ブローカ失語症になり、話せなくなった人でも、歌を歌えることがあります。
歌のメロディは言語固有のプロソディとは別の能力なので、歌のメロディが壊れていない場合は、言葉は喋れないけれど歌を歌うことがきでます。
また、一定のメロディに乗せた歌詞が出やすいこと、興奮すると罵る言葉が出やすいこと、ある状況で適切な情動が動くと適切な言葉が出ること、リズムのいい系列の言葉が出やすいことなどは、発話における音楽的要因の重要さを示しています。
ブローカ失語症では、発話レパートリーそのものが消滅しているのではなく、発話レパートリーは残されてはいるけれど、言語プロソディが働かないため、発話レパートリーを自由に操ることができなくなっていると考えられています。
心の中で思ったことは最初から具体的な音の系列となるのではなく、初めは音韻の団子のような音イメージの塊として心に浮かびます。
この音イメージの塊を具体的な音のイメージの系列に表す手段が、言語プロソディだといわれています。
プロソディという、一息の呼気音が作る持続性の特有な音声パターンが、一種の乗り物のように働き、この乗り物に乗って一息の具体的な言葉のつながりが実現されます。
ブローカ失語症の症状は、この言語プロソディがはたらかなくなった状態であると考えると、全ての辻褄が合います。